アメリカ人は、能天気で無神経で馬鹿である。
そんな連中が、飛行機やら核兵器やらを発明して、さらには月まで行って帰ってくるなど、よくもまあそこまで進歩したものだ。アメリカの発展こそは、世界の不思議のナンバーワンである。
さて、映画もアメリカがなければここまで発展することはなかったろう。まあ、能天気で無神経で馬鹿な映画が多いのだが。
このあいだ見た「カリフォルニア・ダウン」もそんな映画だった。
冒頭、能天気で無神経で馬鹿な女性が登場する。若い女の子が車を運転しているのだ。
対向車が来ているのに、スマフォのメールをチェックしたりしている。
いやいやいや、危険でしょうが~っ。横を向いているその1秒間に、時速50キロなら車は13.8メートル進むのである。しかも、走っているのは、曲がりくねった山間の道路である。まっすぐな高速道路ではないのだ。
もう、私はその女の子に怒り心頭である。彼女の車の助手席に瞬間移動して説教したいくらいだ。
だが、そんな必要はなかった。
突然、道路脇の崖が崩れて、彼女の車はコースアウト。高い崖からピョーンと車は落ちていったのである。私は思わず「ワーハハハハハ。そーら、見ろ。脇見運転なんかしているからバチが当たったのだ」と叫びながら拍手喝采したのだ。
このあたり、監督はなかなかうまい。
イライラさせる女の子を登場させて、一瞬後に地獄へ真っ逆さま。見ている人はカタルシスを感じるのである。さらに、崖に宙吊りになった彼女を助けるために現れるヘリコプターのパイロットが主人公だ。スピーディーで無駄がない。
この映画、とにかく映像はいい。都市が滅んでいく様子が、非常にリアルに描かれている。しかも、人がどんどん死んでいく。
例えば、主人公が「ここは危ないっ。すぐにスタジアムの壁の横まで逃げるんだ」と誘導する。そのおかげで人々は助かり、「なぜ、ここが安全だと?」「プロだからな」などと感謝されるのだが、その後、巨大な津波が発生する。せっかく助けた人たちも全員死亡である。だが、もちろん主人公と奥さんは、間一髪、ボートで脱出するのだ。
主人公は、自分の娘を助けることしか見えていないのである。一応本部に「これから妻と娘を助けに行く」と報告はしているものの、ヘリコプターを自分の家族のために使って平気な男である。日本の救助隊員なら、当然、家族よりも任務を優先するだろう。
だが、脳天気なアメリカ人は必ず家族を優先するのだ。
ラストは、当然ながら娘を助ける。そして、家族3人と、娘を救ってくれた兄弟と共に、姿を変えてしまったサンフランシスコ湾と崩れかけたゴールデンゲートブリッジを見つめるのだ。
「全部、壊れてしまったのね。これからどうするの?」
「新しく作るんだ!」
彼らの目には、ゴールデンゲートブリッジに掲げられた巨大な星条旗がうつっていた。
USA! USA! USA!
いやあ、なんという能天気さ。アメリカ人以外に、こんな恥ずかしい結末は作れない。作れるわけがない。アメリカがここまで発展してきたのは、能天気で無神経、かつ馬鹿なおかげなのかもしれない。