場末の映画館

昔は、映画館が小便臭かったもんだがなあ。

今日の名言「食べるか泣くかどちらかにしなさい!」 ドイツ人が作った真面目なB級映画「パラサイト・クリーチャーズ」

「パラサイト・クリーチャーズ」という映画を見た。

名前を見ればわかるとおり、間違いなくB級である。もしこれがB級でないのなら、私は、これから一生、ウンコは食わないと約束してもいい。

可能性としてあるのは、B級よりもレベルが低いC級だったという結果だが、実は最近これが多い。そんな映画を見るのは、時間の無駄である。まあ、無料だから損をするとしても時間だけなのだが、その時間がジジイの私にはあまり残っていないのである。だから、映画を見る前にはじっくりと吟味するのだ。

この映画は、ギリギリB級だった。ただし、それなりにきちんと作られたB級である。さすがはドイツ人。アメリカの脳天気なB級映画とは格が違うのだ。

もちろんカーペンター監督のような珠玉のB級作品とまでは言えない。だが、珠玉よりも少し落ちる金玉のB級作品くらいなら言ってもいいのではないか。

さて、舞台は、アルプス山脈である。そこに観測基地があり、何人かの学者たちが調査を行っているのだ。

まず、風景がいい。山岳地帯である。思わずテレビ画面に向かって「ヤッホー」と言いたくなるような風景である。私は、山が映るたびに「ヤッホー」と叫んだのだが、こだまが帰ってくるわけではないので皆さんはやめておいた方がいい。もっとテレビが進化して「こだま機能」が付いてから試してみればいい。

これが普通の街が舞台だと、つまらないのである。タイトルの「パラサイト・クリーチャーズ」から推測すれば、これはパラサイト・クリーチャーズが出る映画に決まっている。非常にありがちな設定である。その上舞台までありがちだと、まるで見る気が起きないのだ。また、海もクリーチャーの定番でありつまらない。

山岳地帯は、舞台としては少ないのではないか。南極なら「遊星からの物体X」があるのだが。まあ、ぶっちゃけて言うと、この映画は「遊星からの物体X」の廉価版である。

次に良かった点は、キャラクターが比較的しっかりと性格付けされているということだ。しかも、それなりに個性的だ。

主人公はハゲで薄汚いオッサンだ。女性がいるのに、そのすぐそばで立ち小便したりする。で、その時クリーチャーに小便をかけてしまうのだが、その姿にびっくりしてひっくり返り、自分の体に小便の雨を降らせていた。下品な上にどんくさい。

そのオッサンの上司がまた情けない男で、異常な事態が起こっているというのに、「大臣が視察に来るんやから、この件は隠しときまひょ」などと保身に走る。見ているだけでイライラしてしまい、こんな奴死ねばいいのに思っていたら予想通りに死んだ。

一人、印象的な登場人物がいて、それは観測所に視察に来る大臣である。どことなくドイツのメルケル首相に似たおばさんだ。

保身に走るオッサンが「これは自然からの罰なのだ。いや、私に対する罰でもある」などとブツブツ言い出すと、「なにを戯言をぬかしとんじゃー、このクソボケがーっ」と怒鳴り、ヤギのクリーチャーが出た時は電動ドリルで頭に穴を開けてやっつけ、さらには女の子の足を切開して産み付けられていたクリーチャーを引きずり出し、傷跡にジュワッと焼きごてを押しつける。いやあ、大活躍である。

で、彼女の秘書が恐怖のあまりバナナを食いながら泣きわめいていると、「食べるか泣くかどちらかにしなさい!」と叱咤する。バナナを食べながら泣かせるという演出も面白いが、それに対する大臣のセリフも面白い。

で、そのセリフばかりが意識に残って、見終わった後、「あれえ、最後どうなったんだっけ」と記憶があやふやである。正直、クリーチャーとの闘いにもメリハリがなく、ズバッ、シュバッ、ドカーンというカタルシスがなかったのだ。真面目に作られているだけに、惜しいと思う。

やはり珠玉とは言えず、せいぜい金玉くらいだな。