場末の映画館

昔は、映画館が小便臭かったもんだがなあ。

「ALERT 失踪者緊急警報」は、脳天気で民度の低いアメリカ人にふさわしいドラマだった。

いやあ、久しぶりにしょーもないテレビドラマを見た。「ALERT 失踪者緊急警報」というタイトルなんだが、初回を見ただけで、以降は見ないことに決めた。

まあ、つまらないドラマをわざわざ「つまらない」と言うこと自体つまらないことなんだが、私はそういうタイプの人間なので仕方がないのである。

ドラマは、あまりに安易すぎた。安易、容易、稚拙、いや、ポンポコピーと言っても過言ではない。

大雑把に言うと、テロリストに誘拐された少女を助ける話だ。ラスト、少女は5万人が収容されたスタジアムの人気のない通路みたいな場所(その設定自体がそもそもおかしい)に放置されていた。カラダには爆弾ベストが付けられている。

いや、ちょっと待ちたまえ。テロリストは「5万人を道連れだ」などと言っているのだが、あんな爆弾ベストだけで巨大なスタジアムをどうやって破壊するのか。無理に決まっているではないか。馬鹿じゃないのか?

しかも、爆弾の解除の仕方がさらに馬鹿である。

主人公は「爆弾に詳しい知り合いがいる」と電話をかけて指示を請うのだ。相手の元戦友は「おれは今じゃ寝具売り場の販売員なんだぞ」などとクスッとも笑えないセリフを言ったあとに、「うん、その三本のコードを切ればいいんだ」と指示する。そして、ハラハラもドキドキもないまま主人公はコードを三本切り、爆弾は解除されたのだ。

もうちょっと工夫せいよ、と思うのである。あまりに腹が立って、見終わったあと、「解除に失敗して少女もろとも主人公も死ねばよかったのに」と思ったほどだ。

確かに駄作のニオイは最初からしていた。犯人がアパートの外に逃げ出した。自分たちは、二階の通路である。クソ、これじゃあ追いつけないぜ。

その時、もう一人の主人公である女刑事が言うのである。「通路はまだあるわ!」と決め台詞っぽく叫びながら、二階から飛び降りるのだ。下は、プールである。ずぶ濡れになりながらも女刑事は犯人を捕らえるのだが、このいかにもな展開は、見ていて恥ずかしかった。

プールに水がなくて足を複雑骨折して、骨が突き出た足をブラブラさせながらケンケンで犯人を追いかけ、見事逮捕すれば、それなりに拍手喝采なのだが、あんな展開では驚きもカタルシスもないのである。

こう言うドラマを見て面白がる人もいると思うのだが、少なくとも私は、まったく楽しめなかった。むしろ腹が立って仕方がないのである。難儀なことだ。

仕方がないので、私は最後の爆弾ベストの解除に失敗し、バラバラになった主人公と少女の屍体をかき集めながら泣き叫ぶ女主人公の姿を思い浮かべて溜飲を下げたのである。