2023-05-01から1ヶ月間の記事一覧
午前二時に尿意で目が覚めた。 寝たのは十二時くらいである。二時間持たないほど、膀胱の性能が落ちているらしい。コーヒーもひかえめにし、もはや寒くもないのに情けないことだ。あと十年したら、さらに性能が落ちて一時間おきにトイレに起きるのではないか…
ご存知だろうか? 人間というのは、不思議なものだ。 それまで何も感じなかった行為に対し、何かをきっかけとして急に腹立たしくなったりする。カチンときたり、イライラしたり、心のどこかにトゲのように刺さったりして、それが嫌悪感につながり、例えば夫…
「爺、なにをニヤニヤしている」 「はあ、坊ちゃま。先ほど大相撲中継を見ておりましたら、デビ夫人が観客席におりまして」 「デビ夫人? 誰だ、それは」 「高齢のテレビタレントでございます。わたくしも詳しくは存じませんが、デビという名前の殿方とご結…
パッとしない男が、パッとしないリビングのパッとしないソファに座っている。はっきり言って、顔は不細工である。体型も小太りで身長も低い。 非常に残念だ、と彼は考えていた。福山雅治の顔で生まれてきたらどんなに幸せだったか、と毎日、いや食前食後に考…
"> おれは、穴を掘り続けていた。 "> なんの穴かというと、おれの墓穴なんだそうだ。つまり、おれはこのあと殺されて、自分で掘った穴に埋められるのである。映画で見たシーンのような気がするが、タイトルは思い出せない。 "> おれの後ろには、若いくせに笑…
某企業からの依頼で新しい雑巾の商品企画を考えていた。 クソ。なぜ、私のような一流のプランナーが雑巾の企画を考えなければならないのか。不条理この上ない。 私にふさわしいのは、大都市のランドマーク計画やプレステ6用のゲーム企画であるべきで、せめて…
今は、迷いの時代である。誰も彼もがどの道を行くか迷っている。ほら、前から近づいてくるあの男も。 「あ、すまんけど。北田病院は、どっちやろ?」 私は、こっそりとため息をつく。なぜ、「北田病院をご存知ですか?」と尋ねることができないのか。私が北…
「わたしの名前? 夏子よ」と彼女は、少し笑みを浮かべながら言った。波の音と彼女の声が重なり合い、彼には心地いい音楽のように聞こえた。「でもね」と彼女は、笑みをさらに深めながら冗談めかして言った。「秋には秋子だし、冬は冬子、春になれば春子なの…
死んだ者しか知り得ないことだが、あの世は実に騒々しい場所だ。あたり一面霊魂だらけ。そして彼らの悲鳴だらけなのである。 なぜ、悲鳴を上げているかというと、それはひどい苦痛を感じ続けているからだ。どうやら魂が肉体から離れる際にとてつもない痛みに…