場末の映画館

昔は、映画館が小便臭かったもんだがなあ。

ロジクールSIGNATURE K855というキーボードを購入し、思わず自分を叱咤する。

「自分へのご褒美」というのが、ものすごく嫌いである。正確に言うと、そのセリフを吐く人物が嫌いである。さすがに男でそんなことを言う奴はいないと思うが、もしいたとしたら、今すぐ前に出たまえ。ぶん殴ってやる。

さて、昨日のクリスマスに、私は新しいキーボードを手に入れたのである。季節柄、偶然にも自分へのご褒美となってしまい、実に腹立たしい。自分で自分を殴ってやりたい気分だ。私は、筋金入りの仏教徒である。本来は、クリスマスなんぞに浮かれる男ではないのだ。

手に入れたのは、ロジクールのK855というメカニカルキーボードである。赤軸、無線により三台までの端末に接続可能、テンキーレスの割とコンパクトなキーボードだ。一番大きなポイントは、乾電池式という点である。

自分へのご褒美も嫌いだが、充電式というのも嫌いなのだ。スマホ、スマートウォッチ、掃除機、電動歯ブラシ、電気シェーバー、今の私の生活は充電に支配されている。現に、つい先ほどスマートウォッチがブルッと震えて「おいコラ、はよ充電せんかい」とせかしてきた。エサを欲しがる犬と同じである。あさましい連中なのだ。

そんな時代にあって乾電池式というのは、見上げた心がけだ。メーカーのデータだが、単4乾電池二本(製品に付属)で最長三年ほどもつらしく、以前からこのキーボードには注目していた。だが、私がほしいシックなグラファイト色が「通常1~2ヶ月以内に発送します」となっていて、そんなに待てるか! 他の配色は即日配達なのだが、グラファイトだけは時間がかかるのである。

ところがなぜか24日になると、在庫が「あと4台」と表示され、翌日配達となっていた。見ているとそれが「あと3台」になり、あわてて「今すぐ買う」をクリックして購入したのである。今、確認してみると、また「通常1~2ヶ月以内に発送します」と表記されていたので、すぐに在庫が切れたのだろう。

今、この文章もK855で打っているのだが、打ち心地はまあまあである。赤軸にしては音が大きいのだが、このくらい音がした方が「仕事してまっせ」とアピールできてよろしい。11,000円とメカニカルキーボードとしては安い方だが、それでも私としては散財だ。在庫が減っていくのを見て、思わず買ってしまった自分が情けない。

まあ、ちょうどクリスマスだったし自分へのご褒美ということでよしとしようなどと考えたのだが、いやいやいや、ご褒美と言うほど、私は仕事もしていないし、ボランティアもしていないし、ただ読書とAmazon Prime Videoとキャラメルコーンをむさぼる毎日である。そもそも、つい先ほど「自分へのご褒美」は嫌いだと書いたばかりではないか。ああ、ご先祖様に申し訳ない。

この腑抜けが、と私は自分を叱咤したのである。

ちなみにキートップの白い文字が目立ちすぎるので、カナ部分を別のキーキャップと交換した。地味なツートンカラーになったが、私のような地味なジジイにはピッタリかもしれんなあ。