場末の映画館

昔は、映画館が小便臭かったもんだがなあ。

ローマ字入力にするかと思った一月二日

昔々、勤め人をしていたときの話だが、アホな上司がいた。まあ、基本的に、上司はアホと決まっているので、ことさらアホを強調する必要はない。だが、彼はアホのくせに偉そうにしている時点で、特級のアホと言っても過言ではなかったのだ。

ある日、私がカナ打ちで入力しているのを見て、「なんで、かな入力なんや?」と言ってきた。「パソコンの入力やったらローマ字入力のほうが速いに決まってるやないか」

私は呆れながら答えた。「いや、カナ入力はワンストローク。ローマ字入力はツーストロークでしょ。例えば『わたしは』と打つ場合はカナなら4回、ローマ字なら8回打つ必要がある。同じ人物が打つなら、カナ打ちのほうが速いですよ」

だが、その上司は「いいや、ローマ字入力のほうが速い」と言い張ったのである。あとで判明したのだが、彼は、「初心者ならローマ字入力のほうが早く覚えられる」というのを「速く打てる」と勘違いして覚えていたのだ。まさに特級のアホである。

さて、その上司とは軽い口論になったのだが、「じゃあ、どっちが速いか競争してみよう」となった。個人差があるから意味のない競争なのだが、早撃ちに自信のあった私は、受けて立ったのである。結果は、私の圧勝だった。

「ちなみに私は、ローマ字入力もできますけどね。こちらも速いですよ」と言い、上司のパソコンで光速ローマ字入力を披露し、彼をコテンパンにぶちのめしたのである。あれは、爽快だったなあ。

長々と書いてきたが、本題は、かな入力とローマ字入力のどちらがいいか、ということではない。日本語を書くなら自然で効率的なカナ入力にしろよと思うのだが、まあ、これは人の好き好きだ。不器用な人や手の小さな人などは、カナ入力がむずかしいケースもあるだろう。

ただ、一つはっきりとローマ字打ちが有利な点があって、それはキーボードの選択肢である。英語配列の65%や75%のコンパクトキーボードにやたらと格好いい製品が多いのである。

特に私が気に入っているのが「NuPhy Air75メカニカルキーボード」という製品である。上に写真を載せているのだが、もう、毎日持って歩きたいくらい気に入った。おそらくそれを見た女子大生が「きゃ~、ステキ」と抱きついてくるだろう。こらこら、キスはやめなさい。ああ、舌を入れちゃいかん。

17,980円と結構高価なのだが、いやいやいや、このキーボードなら直木賞間違いなしである。おそらく今までの百倍くらい素晴らしい文章が書けるのではないか。そうなれば安いものなのだ。十万円でも安いくらいだ。

さいわい私は、ローマ字入力も可能である。今までなにも考えずに日本語配列のキーボードを使ってきたが、そうだ、英語配列を選択するという手もあったのだ。ああ、なぜもっと早くそのことに気づかなかったのか……。

私は、購入したばかりのロジクール SIGNATURE K855GRを見つめ、「恨むんじゃないぞ。畳とキーボードは新しいほうがいいと昔の人も言っているではないか」と語りかけた。