人間、第一印象は大切である。
例えば、イケメンで長身、東大卒のエリートでありながら性格が温厚で、ユーモアのセンスも抜群。そんな人なら第一印象はいいに決まっているのだが、たまたまその日が下痢ピーで、名刺を渡しながら脱糞したら、それがその人の第一印象になってしまう。
どんな人だったと聞かれれば、「名刺渡しながらウンコを漏らす人だった」と答えるしかないのだ。最悪の第一印象である。
さて、ウルトラセブンの第一印象は、どうだったか?
実は、あまりよろしくなかった。子供心にモロボシ・ダンの生意気さが鼻についた。なにしろ、現場に急ぐウルトラ警備隊の車の前に立ちふさがり、あろうことか天井に乗っかって発進をジャマするのだ。そして、「ハハハハハハ」と高笑いである。
頭おかしいんじゃないの? と私は思った。
一番納得できなかったのは、名前を聞かれた時の返答だ。
「モロボシ・ダンとでもしておきましょう」
いやいやいや。「とでもしておきましょう、てなんやねん」と私は憤慨した。ちゃんと「モロボシ・ダンと申します」と答えるのが礼儀と言うものである。当時から礼儀正しかった私はそう判断し、「これはウルトラマンほどの期待はできないな」と残念に思ったのだ。
気に入らない点は、まだあった。
ウルトラ警備隊(特にフルハシ隊員)の偉そうな態度が気に食わなかった。「仕方がない。ソガ、いっちょ、おみまいしてやれ」と命令し、車から煙幕を発射するのである。確かにモロボシ・ダンは、任務のジャマをした。だが、いきなり秘密兵器を使うとは何事か!?
希望する就職先のリストから、ウルトラ警備隊が消えた瞬間だった。やっぱり就職するなら科学特捜隊だな。
さて、第1話は「姿なき挑戦者」というタイトルで、登場するのはクール星人。カニみたいな、あるいは微生物を巨大化したような見た目で、ちょっと気持ち悪い奴だ。こいつらが地球人をさらって標本にしていたのだが、いよいよ地球侵略に乗り出したという展開である。
人間標本というアイデアを活かすのならば、もっと昆虫的な宇宙人を出して、「お前を採集してやろうか」という展開でも面白いのではないか。当時の少年たちは、割と昆虫採集をやっていたのだが、それに対するアイロニーにもなる。
ちなみにウルトラマンですでにセミみたいなバルタン星人が出ているので、トンボみたいな宇宙人がいいだろう。
子供心に一点、明確に覚えている場面があって、それはウルトラ警備隊の紅一点であるアンヌ隊員の紹介シーンである。
その時、彼女は医療室で男性隊員に包帯を巻いていたのだが、出頭の命令を受けて白衣からウルトラ警備隊のユニフォームに着替え出すのである。一応カーテンは付いているのだが、位置的に男性隊員から見えるはずで、しかもそのカーテンはスケスケなのだ。着替えシーンが丸見えである。
もちろんその着替えシーンは出てこないのだが、当然、想像はできるのだ。
さすがにブラジャーは付けているだろうな。色は、白である。白以外は認めない。包帯を巻いてもらっていた一般隊員は、それを見ながらドギマギするに違いない。いや、待てよ。ノーブラという可能性もゼロではないぞ。ゼロでない以上は、そうした展開も想定しておく必要があるのではないか。
子供心に、「いやいやいや、それは助平でしょうが。アンヌ隊員、逆セクハラでしょうが」と憤慨した。「子供番組だというのに、いささか配慮が足りないのではないか。円谷プロに抗議してやる」
大人になった今、私が看護師を前にすると急激に血圧が高くなるのは、おそらくウルトラセブンのこのシーンのせいである。おかけで必ず健康診断では居残り組だ。抗議してやろうかと思う。