場末の映画館

昔は、映画館が小便臭かったもんだがなあ。

ウルトラセブン第2話「緑の恐怖」の主役はシズさんでよろしいか?

 ウルトラQウルトラセブンの見どころの一つは、当時の建物や車、人々にある。つまり時代の空気というやつだ。

 私にとってはリアルタイムに過ごした時代であり、懐かしさもあって、つい何度も見てしまうのだ。こうなってくるとすでに老人の域であり、「昔はよかったなあ」が口癖となる。「近頃の若いものは」などと言い出したら、老害待ったなしだ。いずれアクセルとブレーキを踏み間違えて人をひき殺すのである。

 さて、ウルトラセブン第2話の「緑の恐怖」である。

 見たまえ、上の写真の邸宅を。玄関口が見えているだけだが、なんと趣のある佇まいか。右にいるのは若奥様。夫は、地球防衛軍のイシグロ隊員で宇宙で任務についている。

 そして、左にいるのがお手伝いのシズさんである。私の耳には「チズ」と聞こえたのだが、どうやらシズさんらしい。耳が遠くなっているのだ。まあ、「恥部さん」と聞こえるよりはマシである。

 シズさんの朝は、掃除からはじまる。この頃にはすでに電気掃除機があり、このお屋敷なら当然電気掃除機は導入済みである。地球防衛軍は、そこそこ高級取りなのだ。

 掃除機をかけていると、「シズさーん、シズさーん」と若奥様に呼ばれた。胸をユサユサさせながら行ってみると、庭に何やら金属のカタマリが落ちている。

 そうだ、走ってやってくるシズさんの写真も載せなきゃな。

 私は、このシーンでシズさんに目を奪われた。それ以降は、シズさん以外は興味の対象外である。アンヌ隊員も好きだが、彼女はやや外角低めに外れている。美人すぎても可愛すぎてもいけない。シズさんは、まさにど真ん中のストライクなのだ。

 若奥様が口をとがらせる。「困るわ。シズさん。こんなもの庭に置いたりしちゃあ」

「アホか。こんな重そうなもん、わてが置くわけないやろが」とシズさんは思ったのだが、もちろん口には出さない。「あら? わたし知りませんよ」

 実はこの物体、夜中に空からふわふわ落ちてきたのだ。そして、後から判明するのだが、なんとこの中には、その日帰ってきたはずのイシグロ隊員が閉じ込められているのだ。では、あのイシグロ隊員は何者なのか!?

 結論から言うと、植物から進化したワイアール星人が変身した姿なのである。そして、偽物のイシグロ隊員は、夜な夜な元の姿に戻って人々を襲っていたのだ。

「警察からの報告では、この3日間で十数人の被害者が出ている。しかも恐るべきことに、それらがみんな怪物化し人間に襲いかかるのだ。襲われた者がさらに怪物化して人間を襲う。このままいけば数か月後には、地球上の全人類は怪物化してしまうだろう」

 ゾンビ映画でおなじみの展開である。「バイオハザード」の原点がここにあると言っても過言ではない。

 ただし、ワイアール星人、植物だけあって脳が小さいのだろう。非常に頭が悪い。やることなすことトンチンカンである。

 怪しい郵便配達人に偽物のイシグロ隊員を遠隔操作する発信器を届けさせたのだが、それに何の意味があるのか。結局、ダン隊員が発信器を壊したことにより、金属のカタマリも壊れて本物のイシグロ隊員が見つかったのである。

 発信器をわざわざ奥さんの元に届けなければ、計画が露見することもなかったのだ。

 しかも、人間の姿でいるのが結構大変みたいで、小田急ロマンスカーに乗っている途中でプルプルと震えだし、ついにはワイアール星人の姿に戻ってしまうのだ。

 この時、若奥様はプルプルしている夫に気付きもせずにのんきにミカンなどむいてる。しかも、夫が完全に変身するまで気がつかないというのは、かなり脳天気と言うしかない。まあ、若奥様らしいと言えばらしいのだが。

 この後、ワイアール星人は巨大化し、ウルトラセブンに倒され、被害者たちは元の姿に戻ってめでたしめでたしなのだが、そんなことはどうでもいい。

 やはり、私の興味はシズさんにある。ここからは、「緑の恐怖」ではなく、「シズさん写真館」に変更されるのだ。

 さて、これがシズさんの右臀部であるがセクハラの意図はない。向こうに映っているのは謎の郵便配達人で、それを見せたかったのである。「あら、この郵便屋さん、なにか変だわ」と感じたらしい。「ちょっと郵便屋さん」と呼び止めたのだが、彼は見向きもせずにさっさと帰ってしまった。

 ちなみに郵便配達人が乗っているのは、ホンダのスーパーカブである。1958年に誕生して以来、六十数年間ほぼこのデザインのまま販売されている。驚くべき長寿命だ。

 若奥様が「大変、ロケットが着く時間だわ」と言った時の、シズさんの笑顔。なかなか美しく、シズさんの若奥様に対する敬愛が感じられる表情である。だが、もしかすると、「ああ、久しぶりに旦那様に会えるっ」という笑顔なのかも知れない。彼女は、密かに旦那様を愛してしまっていたのだ。そう考えると、この笑顔の中に、隠微なものが立ち現れてくるのである。

「机の引き出しの中から変な音がするんです」とウルトラ警備隊を呼びつけたシズさん。いやいやいや、まず自分で確かめろよと思うのだが、危機管理意識としては正しい。ホラー映画では、そんなことをするキャラクターはすぐに死ぬのだ。ダンとアンヌを案内する際の、躍動的な姿態が魅力的だ。

 さて、シズさん役をされているのは、森今日子さんという女優さんで、東宝第5期ニューフェイスとしてデビューし、1970年代前半まで活動しておられたらしい。

 私が見た映画だと、「フランケンシュタイン対地底怪獣」での患者役、「サンダ対ガイラ」の看護士役があるのだが、さすがに覚えていない。「フランケンシュタイン対地底怪獣」では、沢井桂子という女優さんが女子高生の患者役をしているのだが、その隣にいた患者がクレジットなしだったとのことで、もしかするとそれが森今日子さんだったのかも知れない。今度見る時はしっかり確認しておこう。

 テレビドラマではウルトラQの名作「あけてくれ!」の中で、松代というお手伝いさん役で出ている。お手伝いさん役が似合うランキング3位には入っているのではないか。この役があって、ウルトラセブンへの出演もあったのかも知れない。

 映画の二本は録画していなかったのだが、ウルトラQなら録画を残してある。確認してみると、瀟洒な邸宅から出てくるときに相変わらず胸をユサユサさせていて、ああ、やっぱり巨乳だったのだと嬉しかった。

 今、85歳くらいだと思うのだが、一度、ウルトラセブンの撮影の思い出などをお聞きしたいものである。